【投資の神様も注目】日本の大手総合商社5社の特徴

昨年、日本株を買わないウォーレンバフェットが日本の大手総合商社5社の株を保有しているというニュースが話題となりました。
大手総合商社5社とは、伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、丸紅、そして住友商事のことを指します。
バフェットがなぜ日本の商社に目を付けたかは色々憶測がありますが、主な理由としては、
①低PERかつPBRが1以下のため、割安株である
②総合商社という特性から分散投資ともいえる

割安株となっている理由の一つは、業態の特徴にあります。
総合商社はいわゆる鉄鉱石のような原材料から軍事機器まで多岐にわたって事業を展開しています。
事業構造は非常に複雑であり、投資家からすれば事業の全体像がつみにくいところがあります。
※これを「コングロマリット・ディスカウント」と呼ぶようです。

投資の神様も注目する日本の商社株ですが、各社の違いを紹介していきます。
少し長くなりますので、気になる目次をご参照いただければと思います。
今後の投資対象にするかどうか、参考にしていただければ幸いです。

各社の特徴

伊藤忠商事株式会社

大手総合商社、売上高2位で、繊維・機械・金属・エネルギー化学品・食料・住生活・情報金融の7カンパニー制により原料等の川上から小売等の川下までを包括的にカバーしています。
世界62ヶ国に約100の拠点、中国市場では最強の地位を確立(インフラ建設や国家重要プロジェクトへの参加、CITICと戦略的業務提携)しています。
繊維・食料・生活資材は業界最大手、非資源分野(総合商社トップ)に重点投資し、傘下企業はファミリーマート、デサント、ヤナセ、伊藤忠テクノソリューションズ 、コネクシオ、プリマハム、ベルシステム24HDなどよく名前を耳にする上場企業20社超を傘下に持ちます。
2012年米食品大手のドール・フード・カンパニーからアジア事業を買収、フィンランドの世界最大級パルプメーカーの株式取得による紙パルプ事業の強化しています。
2014年タイCPグループと資本提携、共同で中国の国有コングロマリット中国中信(CITIC)に出資(1兆2040億円)し、2018年ユニー・ファミリーマートHD(現ファミリーマート)を子会社化(2020年完全子会社化)しています。

三菱商事株式会社

大手総合商社、総資産・売上1位で天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発の10事業をグローバル展開しています。
国内外のネットワークを通じて、生活、モビリティ・インフラ、エネルギー・電力の各種産業分野において川上の天然資源開発から川下のコンシューマー向け商品まで手掛けています
石油・LNG・石炭(豪州で資源メジャーBHPビリトンとの合弁で原料炭の大規模開発・生産)・鉄鋼・銅・アルミなど資源権益を多数保有し、国内外約90カ国・地域拠点、約1500社の連結対象会社と協働したビジネスを展開しています。
「中期経営計画2021」にて「全産業を俯瞰する総合力」の活用を掲げています。
傘下に子会社ローソン、三菱食品の他5社、持分法適用会社11社の上場企業を持ちます。
2011年チリ銅資源会社を4200億円で買収、2012年インドIT最大手と提携。2015年農産物総合商社のOlam社に出資(1200億円)。2017年ローソンを子会社化。2018年には三菱自動車を持分法適用会社化。2019年千代田化工建設を子会社化しています。

三井物産株式会社

総合大手商社、売上高3位の日本を代表する商社で、鉄鋼製品、金属資源、機械・インフラ、化学品、エネルギー、生活産業、次世代・機能推進の7事業セグメントで商品販売・輸出入をグローバル展開しています。
世界64ヶ国に約130の拠点、鉄鉱石・原油・ガスなど資源関連は総合商社最大の巨大権益を持ちます。
「環境と健康」を中核テーマに、環境ビジネス・新次世代電力(シェールガス、大規模太陽光発電所、カナダの再生可能エネルギー発電、メキシコの天然ガス火力発電)、アフリカ市場(モザンピーク/世界最大級のLNGプロジェクト等)、アジア市場への医療サービス提供・医薬品の供給を推進。
傘下に持分法適用会社の日鉄物産、本州化学工業、三井製糖、かどや製油、フィード・ワン、スターゼン、富士製薬工業、りらいあコミュニケーションズを持ちます。
2013年ブラジル最大の農業事業会社であるSLCアグリコラと提携。2014年三井情報を完全子会社化。2018年豪石油ガス大手AWEを買収(512億円)、ブラジルのマルチグレイン社(470億円投資、農業生産・穀物物流)から撤退。2019年民間病院グループ・IHHグループに資本参加(2300億円)しています。

丸紅株式会社

大手総合商社、総資産5位で生活産業(ライフスタイル、情報・不動産、フォレスト)、食料・アグリ・化学品、エネルギー・金属、社会産業・金融(航空・船舶、 建機・産機・モビリティ)、次世代事業開発の事業。
世界133拠点でのグローバルなビジネス展開しており、穀物トレーディング・発電容量・エチレントレーディング・水ビジネス等でトップクラスです。
食品・穀物事業、エネルギー事業で積極的に提携を推進し、食品事業ではJA全農とコメの集荷・販売業務で提携、傘下にアルテリア・ネットワークスを子会社に持っています。
2012年米穀物3位のガビロンを買収(2800億円、世界穀物メジャーの仲間入り、穀物で総合商社トップ)、2015年大手食品卸の国分と提携。エネルギー事業では2012年世界2位の民間電力・ガスの仏GDFスエズと提携・欧州やアフリカで発電事業に本格参入、2013年ロシア最大の国営石油大手のロスネフチと液化天然ガス事業で提携。情報関連では2018年NOKIAとグローバルIoT通信サービスの共同開発で覚書締結しています。

住友商事株式会社

総合商社、総資産4位で6事業部門(金属、輸送機・建機、インフラ、メディア・デジタル、生活・不動産、資源・化学品)の商品・サービス・開発をグローバル展開(世界66ヶ国・135拠点)しています。
鋼管・鋼材、非鉄、CATV部門に強み。中期経営計画「中期経営計画2020」では次世代新規ビジネス創出としてテクノロジーxイノベーション、ヘルスケア、社会インフラの3分野に経営資源を重点配分しています。
海外ではボリビア(鉱山運営・採掘)・アブダビ(造水・発電)・中国(リサイクル)・ロシア・カナダ(鉱山機械)・インドネシア(発電所)・ルーマニア(農業ビジネス)などの実績があります。
傘下企業はSCSK、三井住友ファイナンス&リース、住友精密工業、ティーガイア、マミーマート、日新製糖、セブン工業、日本コークス工業等。2017年には住友精密工業を持分法適用会社化しています。

業績や指標の比較

2021/3期での各社の決算と各指標を比較してみます。

2021/3決算伊藤忠商事三菱商事三井物産丸紅住友商事
株価(2021.8.6時点)3380.03216.02635.0912.61561.5
売上高(百万円)10,362,62812,884,5218,010,2356,332,4144,645,059
※前期5,299,814
経常利益(百万円)512,475253,527450,202281,763-94,215
※前期251,922
純利益(百万円)401,433172,550335,458225,243-153,067
※前期171,359
PER(倍)予9.0712.356.846.896.73
PBR(倍)実1.470.710.820.840.73
ROE(%)12.73.28.015.6-6.00
ROA(%)3.61.43.74.3-1.2
自己資本比率(%)29.730.136.526.231.3
1株当たり配当(円)88134853370
配当性向(%)25.452.142.725.930.1

2021/3期では住友商事のみ赤字決算となっていますので、参考に2020/3期の数値も入れました。
なお、住友商事は直近の2021年度第一四半期決算で黒字展開したことで、株価が上がりました。

さて、決算の比較ですが、各々特徴があります。
さすが日本の5大商社だけあってトップの三菱商事は13兆程度、下位の住友商事でも5兆円程度の売上高を誇ります。
そしてPERとPBRも割安の水準であり、自己資本比率も文句なしの水準です。


特徴が出ているのは配当性向です。
配当性向とは、会社が税引後の利益である当期純利益のうち、どれだけを配当金の支払いに向けたかを表しており、言い換えれば「どれだけ株主に利益を還元しているか」を表している数字です。
飛びぬけているのは三菱商事と三井物産で、配当利回りは4%を超えています。
配当目的であればこの2社がおすすめできます。

もう一つの着目点としては、「稼ぐ力」を示すROEです。
ROEとは自己資本だけでどれだけ稼いでいるかを示しているものです。
ちなみにROAは自己資本ではなく融資で稼いだ分を示しています。
この中では伊藤忠商事と丸紅がROEが高くなっています。
一般的に日本企業はROEが10%程度と言われていますので、その水準は超えています。
ROEが高い程自己資本を効率よく使い、利益を上げているということで、企業としての経営がうまいという見方もできます。

最後にダークホースは住友商事です。
住友商事はコロナショックの影響もあり、2021/3期で見ると唯一赤字決算となっています。
これは主に海外事業が原因で工事の遅延や追加コストを計上したためです。
しかしながら、2021年度は通期で黒字予想を出しているため、今後の株価の動きが注目されます。
またつい先日ニュースになりましたが、国内外の各事業所の決算システムを統合して業務効率化を図るなど、経費圧縮にも積極的です。
過去15年間で見ると売り上げ高は減少傾向なのですが、経常利益や純利益はほどんど横ばいというデータを見ても、期待ができる企業ではないかと思います。

まとめ

投資の神様ウォーレンバフェットが資産を投じた日本の大手総合商社5社 。
どの銘柄も長期保有したいと思える素晴らしい企業です。
インカムゲイン(配当金)も魅力ですし、銘柄によってはキャピタルゲインも期待できます。
銘柄選びの選択肢として候補にしてみてはいかがでしょうか。

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